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浸潤麻酔が効かなくて困ったことはありませんか!?


歯科治療を行うときの痛みは、浸潤麻酔でコントロール。

浸潤麻酔が効かないと、その先の治療に入ることができません。


麻酔が不十分な中で治療を強行突破しようとすると、痛みで中断。

患者さんが我慢してくれて何とか終わらせた、という経験はありませんか。








「生涯歯を残せる時代の5つのスキル」では、生活歯治療(第3章)の冒頭に浸潤麻酔を取り上げています。(p.58~65)


麻酔についてのコツは過去にも掲載しているのでみて下さいね。









今回は、

  • 静岡市開業の望月亮先生(日本歯科麻酔学会専門医)

  • 静岡県立短期大学教授の仲井雪絵先生(日本小児歯科学会指導医)

  • ベル歯科医院 院長鈴木彰先生

の三名に

本書を絡めて他の歯科医師の先生の見解

を教えていただきました。(インタビュー日 2018年6月)





(鈴木先生)

患者さんは痛みに敏感です。初対面の歯科医師から治療を受ける時は処置が痛くないかを全身をセンサーにして探っています。不快感を与えず必要十分な浸麻を行うことができなければ患者の信頼を得ることができず、不信感が生じてしまいます。

私自身の経験もそうですが、研修医たちも浸潤麻酔が上手くなると自信もつき、

患者への説明や声掛けも堂々とし、その他の技術もメキメキと上達し始めます。

やはり、浸潤麻酔のマスターが、力をつける一歩目と言えますね


(望月亮先生)

「全身をセンサーにして」という記述、その通りと思います。

痛くしないというのは歯科医にとって最大の武器で、口先だけの優しい言葉などとは比べ物になりません。





(鈴木先生)

30G(ゲージ)・ショートというのを使っています。


(望月亮先生)

注射針ですが、望月は33Gという極細を使っています。







(鈴木先生)

  • キシロカイン

  • シタネスト を使っています


(望月亮先生)

■局部麻酔について

局麻はやはり、効きにくいのではという予測が大切と思います。

止血目的のために打つのか、それとも除痛のために打つのかによって、薬剤や打ち方を使い分けます。循環器疾患を持つ患者でも、シタネストでは止血効果が期待できません。その場合は注意深くオーラ注を使います。オーラ注は酒石酸水素アドレナリンが1/73000含まれており、言わば「血管収縮薬が一番濃い」麻酔薬ということもできます。

望月は

  • キシロカイン

  • シタネスト

  • オーラ注

  • スキャンドネスト という4種類を使い分けています。

うちのアシスタントたちは、

  • 普段はオーラ注、

  • 血圧高いひとはシタネスト、

  • 何か事情のある特別の患者はスキャンドネストと思っています。

先生がキシロカイン持ってこいというときは、強力な除痛が必要な難しい処置なんだなと彼女たちに緊張が走ります。実際にはキシロカインとシタネストで十分なんでしょうけどね。



(仲井教授)

麻酔薬は、私も(大学病院では)

  • キシロカイン

  • オーラ注

  • シタネスト

  • スキャンドネスト

を使用していましたが、ほぼ、オーラ注とスキャンドネストで十分でした。

スキャンドネストは血管収縮薬が含まれていないため麻酔効果が早く消失します。そのため短時間で終わる治療に向いています。

小児患者では、術後の咬傷を嫌がる保護者も居られます。その場合、治療中はお利口さんにできても、あえてスキャンドネストを使用したり、交換期の乳歯抜歯でも(通常はオーラ注の注入量を少なめで十分対応できますが)たまにスキャンドネストで対応していました。


学生・研修医・専門医をめざす若い歯科医師にはリドカインの中毒量(4mg/体重kg)を意識させて、(治療する前回に)患児の体重を計測させた後、薬液の濃度とカートリッジ1本あたりの量(1.0ml or 1.8ml)によって、治療で使用するオーラ注(あるいはキシロカイン)を最大限何本まで使用できるかを事前に算出させてから治療をさせておりまし

 万が一、局所麻酔の奏功が悪い時、追加で局所麻酔を注入するとしたら、どこまでが限界量かを意識させる必要があると思っておりました。




(鈴木先生)

私が自院で研修医たちに教える際、針を曲げてから使うよう指示をしています。

直線状の針は、そのまま使用すると手の固定点が取りにくいため危険だからです。

あらかじめ、刺入と固定がしやすい角度に曲げておきましょう。

ただし、針の先端は滅菌状態を保つことと、針刺し事故防止のため、針の根本が中央部までしか触れないように十分注意してください。


(望月亮先生)

これは熟練した術者なら効果的と思うけど、初心者の術者には針刺し事故の危険を増すだけです。たしかにストレートアングルは危険だし打ちにくいけど、望月も仕方なく針を直角に近く曲げて打つことが多いです。あれってイヤなんだよね。


(仲井教授)

私は小児or 障がい児・者を対象とする場合が多かったので、患児の視野に注射器を入れたくない理由により、やはり針を折り曲げて刺入しておりました。

 注入時に針をレストである左の指に乗せやすいので、患児が不意に動いても動じることなくできるからです。

(口腔外科では、折り曲げ厳禁だと学生時代に教わりました)







(仲井教授)

刺入点はほとんど(痛点の少ない)歯間乳頭部ですが、下顎乳前歯を抜歯する場合だけは歯肉頬移行部にしてました。


下顎6番の局所麻酔がどうしても効かない場合は、神経支配の破格を疑って、下顎6番の近心舌側に刺入することもあります。


痛みを与えやすい上顎口蓋側への刺入方法を、両手利きではない私は右側臼歯部と左側臼歯部で変えておりました。





局所麻酔で最も重要な「待ち時間」


(望月亮先生)

局麻の奏効にもっとも重要なのは、じつは刺入してからどのくらいの時間を置けるかということに尽きます。前述の下顎大臼歯抜髄の時なんか、時間おきたいのでわざと麻酔後パノラマ撮りに行ったりします。シタネストのメーカーは最低5分は置いてくれ、と言ってます。そこまでとても時間取れませんけど。


浸潤麻酔、局所麻酔は、

手順の遵守のほかに、薬剤の選択、待ち時間も重要な要素です。

「生涯歯を残せる時代の5つのスキル」では述べることができなかった追加情報も是非頭に入れて臨床に生かして下さい。



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麻酔の心得

麻酔の具体的な手順

困ったときのハウツー


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